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2001年09月『質問へのご回答』

 今月は、私のホームページに来た質問にお答えしたいと思います。まず、その質問から紹介しましょう。

 先日、ご著書『幸福な人生の秘密』の付録CD「華の瞑想」を聞きながら瞑想して、これなら自分一人でもできると判断して、その後一人で「ひーー、ふーー、みーー、・・・・」と、声を出しながら瞑想しておりました。ひとつ疑問な点が生じてきましたので、教えていただきたいと思ってメールを書いております。
 というのは、朝30分〜1時間瞑想すると、その日一日仕事にならないということです。倦怠感と眠気がおそってきて、重い体をひきずりねぼけまなこで仕事をしています。朝、目がさめて心の中がいろいろな想いでいっぱいになってても、瞑想が終わると波ひとつない湖のように心は静かになっています。それなのに後から倦怠感におそわれるのは何故なんでしょう? 朝、瞑想をしなければこういう現象は起きません。
 瞑想と倦怠感は因果関係があるように思えるのですが、真偽のほどはどうなんでしょう? ぜひ教えてください。お願いします。 
斉藤 整

 斉藤さんは、朝瞑想すると倦怠感が出てくる、その瞑想と倦怠感が関係があると思われるということですが、まったくそれは一対一に対応しています。瞑想することによって眠気と倦怠感が襲ってきているのです。

 最初に、斉藤さんはひょっとするとこれまで瞑想のトレーニングをされていなくて、この本を読んでご自分で瞑想を始められたのではないかと思われますが、その割に、ひじょうに素晴らしい瞑想ができているということで、まずは「おめでとう」といいたいと思います。

 最近、あちこちで瞑想会をしていますと、生まれて初めて瞑想をされる方がひじょうに深い瞑想に入られるので、びっくりしています。これは世の中が変ってきているのか、数年前とはまったく状況が違うような気がします。

 つい先日も、湯川れい子さんが宮古島でプロデュースした「琉球の星祭り」というのがあって、そこで100人くらいの人たちと共に瞑想したのですが、ほとんどの人が涙を流していました。そのなかには地元の方たちもずいぶん参加されていて、生まれて始めて瞑想するという方もいたのですが、みなさんたいへん深い瞑想に入られていました。

 そういう意味で、斉藤さんもこの私の本だけで瞑想をやられたとして、ここまでの瞑想に入られたということはすごいことですが、そういう方がひょっとするといまたくさん出てきているのかもしれません。

 それで、深い瞑想にはいるとどうして倦怠感や眠気が出てくるのかということですが、その答は簡単です。瞑想というのは代謝が落ちるのです。体の代謝が落ちる状態というのが瞑想状態です。ですから、瞑想から出てきても代謝が落ちた状態になっていますから、したがって倦怠感や眠気というのが襲ってくるわけです。

 代謝が落ちた状態でいちばんわかりやすいのが、動物の冬眠ですね。動物というのは何ヶ月も冬眠して、飲まず食わずで過ごすわけですが、なぜそういうことができるかというと、その間、体の代謝をものすごく落としているのです。したがって飲まなくても食べなくても死なないわけです。

 私も瞑想に入るとほとんど呼吸が止まりますが、これは神秘的なことでもなんでもなくて、結局体の代謝がものすごく落ちて、胸の呼吸筋を動かさなくても、喉から自然に入ってくる空気の量 で間に合うまで代謝が落ちてしまう。ですから通常の呼吸をしなくても生きていられるのですが、そのくらい代謝が落ちます。最初は私も、瞑想から出てきて呼吸が止まっていることに気づいたときはびっくりしました。死んじゃったのかと思ったのです。でも最近は、目をつぶるとほとんど呼吸が止まった状態になります。

 瞑想の合宿を行い朝から晩まで瞑想をするようになりますと、体の代謝が落ちた状態になりますので、斉藤さんのように朝から眠たくてしょうがありません。階段を2、3段上がるのもつらいほど、そういうときは体がだるいのですね。

 でも、そういうふうに体はだるいのですが、精神的にはものすごくいい状態になって、そういう状態で1週間も過ごすと、見違えるような精神状態になって戻ってきます。ですから、精神的にはけっして悪いことではありませんが、日常生活の上では都合悪いことも起きることが考えられます。

 瞑想というのは基本的にはそういうふうに代謝が落ちますので、それを補う意味で運動をしなくてはいけないのです。本の中でも瞑想の注意をいくつか述べていますが、その一番目が運動することです。瞑想を習慣化したときには、必ず体を動かさなければなりません。

 どういう運動がいいかというと、これはほんとうに体を動かすことなら何でもよくて、血の流れが活発になって代謝が活発になって、気の流れも活発になればよいのです。もちろん気功法とかヨーガがいいのかもしれませんが、散歩でもテニスでも、家事でも農作業でもいいのです。そういうふうに体を動かすことによって、代謝が落ちた体を落ちたままにしないで、代謝をあげてバランスをとることが必要です。

 たとえば座禅の場合ですと、作務といいまして掃除や薪割りなど、お坊さんたちが生活するための労働があります。ですから座禅をしながら重労働をすることでバランスをとっています。永平寺などに籠もるお坊さんたちは、1年もたつと肉体労働者のように筋骨逞しくなりますが、それほど激しい労働をしてバランスをとっています。したがって朝から夜まで瞑想するような状況になると、相当意識して体を動かさないとバランスがとれません。

 斉藤さんの場合ですと、朝30分から1時間の瞑想で代謝が落ちてしまうということですが、ひとつは、最初に申し上げたとおり、いい瞑想をしたから代謝が落ちたのですが、注意事項としては、瞑想の終了の儀式がちゃんとできていない場合があります。代謝が落ちてもとの意識状態に戻らないまま、歩き始めているのかも知れません。ですから終了の儀式をちょっとていねいにやられるといいでしょう。

 これはどういう方法でもいいのですが、私は両手をこすり合わせています。そうすることによって皮膚の感覚がありますから、それを感じることで瞑想から出てきます。これは電車で瞑想していていも、手をこするだけですと、怪しまれないで簡単にできますし、自分で決めて毎回やっていると、すっとスイッチが切り替わるような感じです。

 それから2番目には1時間は長すぎます。初心者は30分以内にとどめてください。自分で注意しいていると時間はわかります。そして3番目になるべく運動してください。私も自宅から会社に来る車の中で瞑想していますが(幸い、運転手付きの車が迎えに来ますから)、会社に着いたらエレベータを使わないで5階まで階段を登ります。そうして少し代謝をあげてから仕事に入るようにしています。心して体を動かすようにしています。駅からバスに乗っていたのを歩くとか、いろいろな方法があると思います。私はさらに週末は必ずテニスをしています。激しい運動してバランスをとっているのです。

 それでも倦怠感や眠気がとれなかったら、朝の瞑想をちょっとおやめになって、寝る前の瞑想だけにしたらいいでしょう。そうすると睡眠が深くなって、朝早く目が覚めるようになります。瞑想で体が休まって長い睡眠が必要なくなります。それだけいい睡眠がとれますから、逆に寝る前の瞑想だけにして、朝の瞑想はしばらくや止められたらいいかもしれません。

 でもほんとうは、そういう倦怠感があって眠気がある状態でずっと過ごすと、いいといえばいいのです。ある程度ベテランになると、僕自身、いまは終了の儀式をやっていません。なるべく瞑想の状態と日常生活をミックスしようとしています。これはちょっと危ない話で、初心者にはもちろん勧められないのですが、ミックスすることによって日常生活における精神状態がもう少し平和であるようにという願いを込めているのです。いつも平和でいるのはなかなか難しいのですが、そういうトライをしています。

 したがって、いまは会社にいるときもじつは結構眠いですし、少しぐったりしていますが、そのかわりポワンといい気持ちでいますから、以前に比べるとカリカリしたりイライラしたりすることはなくなっています。

 瞑想生活も慣れてそれが楽しめて満足できるようになったら、逆に倦怠感や眠気を楽しむというのもひとつの方法です。でも初心者のうちはお勧めできませんので、3年間程実習されてから、トライするのも悪くはないかもしれません。ただ、自分が居心地が悪かったら、それはおやめになったほうがいいでしょう。

 そういうことで、まず素晴らしい瞑想を始められた方から質問をいただいたことをたいへん感謝します。