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『こんな病院が欲しい』
毎日新聞社

 これは、マハーサマーディ研究会の指導陣(プリンシパル・コントリビュータ)の医師たちが共著でまとめた新しい病院構想である。いま病院は、人件費の高騰と高価な検査機器の償却などが原因で、経営はけっして楽ではない。程度の差こそあれ、患者を「薬づけ・検査づけ」にしないと、やっていけないのが現状だ。不要な手術や医療ミスなどの批判も少なくない。それらの結果 として、国民健康保険はすさまじい勢いで支出が膨らみ、今や30兆円の規模になって破綻寸前。日本の医療は、大きく歪んでしまった。
 もうひとつの問題点は、従来は絶対的と考えられていた西洋医学の限界。身体は部品の集まりであり、部品の故障が病気だという西洋医学の考え方は間違いであり、もっと人間全体、その人の人生全体を見ていかなければいけない、という気運が盛り上がっている。この思想を推進する医師たちを中心に、「ホリスティック医学協会」が成立。人間の自然治癒力を中心に据え、漢方や各種の代替医療や民間医療の思想や手法と、西洋医学との融合をはかっている。「身体のケア」は、抜本的に見直さなければならない時期に来ている。
 また、病人、あるいは健康な人が病気にならないために「心のケア」が重要である。それをさらに押し進めると、従来は宗教の領域だった「魂のケア」が求められている。
 また、西洋医学では死は敗北であり、極端な延命治療が施されており、そのため病院では、人間としての尊厳を保って、自然な死を迎えることが困難になってしまった。「死の意味」を考え、「死を受容」するという、「死のケア」もこれからは医療現場のなかで位 置づけられていく必要がある。いっぽう、人口的な出産がいかに生命を歪めているかも指摘。
 こうした「生まれてから死ぬまで、ずっとケアしてくれる」という新しい概念の施設の構想を「ホロトロピック・センター」と命名。(ホロトロピックというのは、著名な精神病理学者であるスタニスラフ・グロフ博士の造語で、「全体性に向かう」という意味) 21世紀の人類社会の「へそ」になるべき施設構想を通 して、そうした概念を提案している。