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『「あの世」の科学・「この世」の科学』
PHP研究所

 これまで量子力学、深層心理学、東洋哲学(仏教)の3つの世界を柱に、「あの世」の実態に挑んできた天外伺朗氏が、今度は宇宙物理学として著名な桜井邦朋博士と対談というかたちで、量 子力学のテーマをひとつひとつ解釈していく会心の書。
 現在、量子力学の最先端で何が問題になっているかの解説書としても読めるし、また人類の意識の歴史書としても読め、じつに面 白い。これまで天外氏がこだわったきた「あの世」のかたちが、さらに明確になってきたともいえる。
 仏教の根底にある「唯識」によれば、「この物質界というのは、本当に存在するのではなく、私たちが意識の底で作っているものである」。つまり、「物質界とは、私たちが意識で考えたものがそのまま外界に反映されているだけだ」ということである。
 また、量子力学のコペンハーゲン派の考え方によると、「意識を持った人間が観測すると、波動関数の収縮が起きてそこに物体の存在が確認されるが、意識を持った人間が観測しないと、それは波動関数で表されていて、何が何だか訳のわからない状態になる」。つまり、「意識を持った人間が観測することによって、物体は局所性をもって観測され、そうでない場合は局所性がまったくないような状態だ」ということである。それをさらに言い換えれば、「意識を持った人間が観測することによって、はじめてそこに現象界が現れてくる」ことになり、それは唯識の根本と同じことになる。
 桜井氏は、物理学とはさまざまな科学の中にあって、諸学を貫くある種の自然法則(真理)を発見し、その合理性と因果 関係の成り立ちについて解釈を試みるものであることを語る。そのための道具である「数学」もまた人間の被造物であると。そういう意味で物理学はきわめて哲学に近いともいえる。
 そして現代の物理学者の多くが神の存在を決して否定せず、ホーキングにしても、「結局は、神の心を今私たちは読んでいるのだ」という立場をとっていることなどを紹介する。だが、物理学者の多くがまだ「解釈」を避けようとしているのは事実だが、あえてそこに踏み込めば、天外氏の構想は首肯しうると語る。
 「マクロとミクロは分離不可能」、「すべての現象は時空を超えた因果 律で結ばれている」「宇宙は人間を生み出すためにあった」「人間は宇宙に包まれると同時に宇宙を包み返している」などユニークな切り口に思わず引き込まれて読んでしまうだろう。
 いずれにしも「宇宙の成り立ち」が、いままさに明らかにされようとしている現代が、面 白い時代であることは確かなようだ。そしてそれは意識の拡大のなかで人々が見てきたものが、いま宇宙規模で証明されつつあるということかもしれない。